心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
2人は外に出ると、用意してあったヴィリアー伯爵家の家紋が入った馬車に乗り込んだ。
普段はガイルと数人の使用人しか見送りに来ないというのに、ヴィリアー伯爵家で働いている使用人全員が外に集まっていた。
調理場の料理人たちや庭師などまで集まっている。
「おお。さすが、うちの聖女様……マリア様の美しさは世界一だな」
「こんなに可愛らしいマリア様を見たら、王宮の人たちも大層驚くでしょうな」
「そんなの当たり前です。マリア様の美しさに見惚れない方などおりません」
全員がマリアを見て褒め称えている。
すっかり『うちの』なんて言っていることに、グレイはつい笑いそうになってしまった。
以前は使用人たちの会話など聞こえてきたら、鬱陶しいと思っていたはずなのに……と、グレイは自分自身の心の変化に驚いていた。
「マリア。皆に挨拶をしてやれ」
「……! はい」
マリアが馬車から顔を出して「行ってきます」と挨拶をすると、馬車はゆっくりと動き出し王宮に向かって出発した。