心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
36 初めての王宮
初めての馬車に乗ったマリアは、王宮に行くまでの間ずっと外の景色を眺めていた。
森を抜ける時は自然の色に目をキラキラさせて。
街中を走っている時はたくさんの建物に目を見開いて。
歓喜の声を上げたりはしなかったが、マリアは初めて見る外の光景に大興奮していた。
「……街がめずらしいか?」
「はい。こんなにたくさんのお家があるなんて……。人もいっぱい……」
ヴィリアー家の敷地は広く、周りに家はない。
檻に監禁される前は部屋の窓から外を見ていたマリアだが、これだけたくさんの建物は見たことがなかったのである。
祭りなどがあれば連れてきてやろう。
そう思う気持ちと、だが聖女であるマリアが街に現れたらパニックになるのではないか、マリアに危険が及ぶのではないか、そう思う気持ちがグレイの中で対立していた。