心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
グレイは眼帯を引っ張り、顔から外した。
真っ黒な眼帯を外された子どもの瞳は、周りをキョロキョロすることもなく真っ直ぐにグレイを見つめていた。
子どもの顔の部分には月の光が当たっていないというのに、瞳がはっきりと見える。
ライトアップされた宝石のように、眩しく輝く黄金の瞳。
瞬きをするたびに、光のカケラがこぼれ落ちていくように見える。真っ暗な中で、2つの大きな黄金の宝石が浮かんでいるようだ。
グレイはその状態のまま動けなくなっていた。
見てすぐに聖女であると確信したが、それを素直に喜ぶ気にもならない。
他に質問しようと考えてきたことも、今は何も聞く気にならない。
宝石になど微塵も興味のないグレイですら、そのあまりにも美しい瞳にしばらくの間釘付けになっていた。