心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「マリア。あれが王宮だ」

「王宮……」


 広い道の先に見える大きな大きな建物。
 そこに向かう一本道を馬車が走っている時、なぜかマリアはこの道を見たことがあるような不思議な感覚がしていた。

 何年も前に、真っ暗なこの道を誰かに抱かれて通ったような不思議な記憶。

 王宮の門の前に馬車が到着し、御者の隣に座っていたガイルが王宮からの招待状を見せると、門番はすぐに門を開けてくれた。

 通り過ぎる際、窓からチラッと見えた門番が興味深そうにマリアを見ていた。
 門を抜けてしばらく進むと、目的地に着いた馬車がゆっくりと停まる。

 外を覗いたグレイとマリアは「……っ!」と息をのんだ。
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