心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 騎士からの誓いの言葉を聞いて、マリアは少し焦りながらグレイを振り返った。
『その言葉を受け取ってやれ』という意思を込めて、グレイはコクッと軽く頷く。

 誰もが誇らしそうな顔でマリアと騎士の姿を見つめていると、国王が拍手をしながら笑顔で言った。


「見事だ。聖女、マリア様。これにて正式にあなたを我が国の聖女として認めましょう。聖女という称号は大公家と同じ扱いになる。ここにいるほとんどの者よりもあなたの方が地位が上だ」

「?」


 称号だの大公家だの地位だの言われてもマリアにはなんのことだか全くわからなかった。
 しかしグレイが小さくニコッと笑っていたので、マリアは嬉しいことなのだと理解した。


「ありがとうございます」


 マリアから感謝の礼をされた国王は、チラリとグレイを見た後にわざとらしいくらいの笑みを浮かべながら1つの提案をした。


「ところで……聖女の称号を持った者であれば、特別に王宮で暮らすことが可能だ。どうだ? 王宮で暮らす気はないかな?」

「!!」
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