心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 手紙に書かれていたのでこの話が出るとは予想していたが、思っていたより早かったな……とグレイは思った。

 期待を込めた目でマリアを見つめている貴族達や王子にもイライラしてしまう。

 グレイはまだ国王に話しかけて良いという許可を得ていない。
 この質問はマリアに向けられたものなので、マリアしか答えることができない。

 もちろんマリアの答えは決まっていた。
 

「わたしはお兄様と一緒がいいので今の家で暮らしていきます」

「王宮ならば贅沢な生活ができるぞ」

「今も十分贅沢させてもらっています」

「聖女として呼び出すたび……わざわざ馬車で来るのは大変だろう?」

「馬車はとても楽しかったのでもっと乗りたいくらいです」

「……本当にいいのか? 聖女ともなれば狙われるようになるかもしれないぞ? 王宮の騎士達に守ってもらわなくていいのか?」

「ガイルさんがいるから大丈夫ですっ」

「ガイル?」


 グレイは思わず噴き出してしまいそうになるのをなんとか耐えた。
 確かにガイル1人で普通の騎士数人分くらいは役に立つだろう。
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