心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
王子の婚約者に考えているという言葉は『王宮はまだ聖女を手に入れるのを諦めていない』と言っているようなものであった。
聖女の本来の役割を熱弁されたり、イザベラの件で遠回しに脅してくると予想していたグレイは、聖女と王子を結婚させるという国王の作戦に意表をつかれた。
まさかそんな手を使って聖女を手に入れようとするとは考えていなかったのである。
グレイの返事を聞いた国王は、少し考える素振りをした後に明るく言った。
「それもそうだな。マリア嬢本人の了承は必要だ。では婚約者候補としておこう」
「……候補もまだ必要ありません」
「まぁそう言うな。試しに2人で話してみるといい」
「え?」
「これから私はヴィリアー伯爵とイザベラ婦人に関しての話し合いがある。その間、マリア嬢とエドワードは2人で庭でも散歩してきなさい」
「!?」
グレイが反応するより早いか、すでに王宮の執事が「聖女様こちらです」とマリアの手を引いて扉に向かわせている。
エドワード王子は戸惑いながらも国王と王妃に急かされて移動させられていた。