心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 執事に手を引かれたマリアは、心配そうな顔でグレイを振り返った。

 マリアと目が合ったグレイは、険しい顔をしている。
 いつものように『大丈夫だ』という合図の頷きもないし、優しく見守っているような表情でもない。


「あ、あの……」

「お静かに。これから会議が始まりますので、聖女様はこちらでお待ちいただきます」


 不安になったマリアが執事に話しかけようとしたが、優しくあしらわれてしまった。
 これから会議が始まると言われては、ここに残りたいなどとは言えない。

 マリアはグレイに声をかけることもできず、そのまま王座の間から出され扉を閉められてしまった。

 王座の間から出たのはマリアと執事、それからエドワード王子だけである。
 廊下には警備の騎士達が一定の間隔を開けて並んで立っている。

 執事は2人を王宮の中庭へと案内した。
 移動中は、マリアと執事の少し離れた後ろをエドワード王子がゆっくりとついて来ていた。

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