心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 誰が何をしたでもないのに不機嫌そうに怒っているエドワード王子が不思議だった。
 執事が2人の元から離れると、一気に静寂がやってくる。

 マリアはその静寂を何とも感じなかったが、王子はとても気まずそうな顔をしている。

 時々チラッとマリアに視線を向けてくるが、目が合うと慌ててそらしてしまう。
 顔を赤くした王子に向かって、マリアはとりあえず挨拶をしてみることにした。


「エドワード王子様。マリアでございま……」

「お前、チビだな!」

「…………え?」


 ドレスの裾を持ち、メイド長のモリーから教わった貴族の礼をしようとした時……エドワード王子がその一言を発した。
 離れたところで様子をうかがっている執事が、頭を抱えるような仕草をしている。

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