心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
グレイ少年は生まれつきそんな冷徹な性格だったわけではない。
幼い頃は笑顔で父親に寄り添い、泣きながら母親に抱きしめてもらっていたこともある。
喜怒哀楽のある、普通の子どもだったのだ。
彼が感情をなくしたきっかけは、もちろんヴィリアー伯爵家が崩壊したことによるもの。
あの当時、彼はまだ6歳だった。
突如、自分の父に新しい家族ができてしまったこと。
父がグレイに会いにくることはなく、会話どころか挨拶をすることも、顔を合わせることすらなかった。
そして、それにより優しく美しかった母が精神を壊し廃人になってしまったこと。
グレイがどんなに泣いてもすがろうとも、高熱の病気になろうとも、母が部屋から出てくることはなかった。
そんな生活に一変した彼は、信じていたもの全てに裏切られ自身の心を壊してしまったのである。
笑顔をなくし、希望を捨て、彼は冷徹非道な男へと成長していく。