心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 聖女の力を見てみたい。



 この子どもが聖女だと確信したグレイは、真っ先にそう思った。
 聖女の力である『治癒の力』を、この目で見て確認したい。


「怪我をしたら治せるのか?」


 子どもはコクリと頷いた。

 グレイはこっそり隠し持って来ていたナイフを取り出し、いきなり自分の左腕をザクっと切りつけた。
 腕には大きな深い切り傷、そこからは血がポタポタと垂れている。

 グレイの奇行を目の前で見ても、子どもは微動だにせずその様子を見つめているだけだった。
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