心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「デザートだって。お前、食べる……か……」
そう言いいながらマリアを見た王子は、思わず言葉を途中で止めた。
先ほどまで無表情に近かったマリアの顔が、あきらかにパァッと明るくなったのがわかったからである。
「準備してよさそうですね」
「ああ……頼んだ」
執事と王子はマリアの答えを聞く前に話を進めた。
キラキラと輝く瞳を見れば、答えなど聞かなくてもわかるからだ。
今まで甘い物などほとんど食べてこなかったマリアは、すっかりケーキやクッキーの虜になっていたのである。
『デザート』という甘い誘惑に、マリアは嬉しさを隠すことができなかった。
執事は近くにいたメイドたちに指示を出し、自分は他の使用人たちと一緒にテーブルや椅子などのセッティングを始める。
たくさんの花に囲まれた美しい中庭に、あっという間にそのセットは出来上がった。