心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
ボーッとしているマリアに気づいていないのか、エドワード王子は自分の手をギュッと強く握ると何かを決意したようにマリアに向き直った。
少しだけ顔を近づけて、先ほどまではまともに見れなかったマリアと視線を合わせる。
「お、お前が望むなら、俺がお前の婚約者になってやってもいいぞ! へ、陛下も言ってたし、仕方なくだけど!」
「え? マリアは婚約者にならなくていいです」
「……は!?」
マリアからのキッパリとした拒否に、エドワード王子は口を大きく開けてポカンとした。
周りで見守っている執事や騎士達がハラハラしながらその様子に釘付けになっている。
今目の前で、第2王子が聖女に婚約を断られたのだ。
「だってマリア、お兄様と一緒がいい……」
「お兄様って……! そんなずっと一緒にいられるわけないだ……ろ……」
エドワード王子の言葉が最後途切れてしまったのは、マリアの後ろに1人の人影が見えたからである。