心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 氷のように冷めきった碧い瞳に見つめられて、エドワード王子は背筋がゾッとした。
 突然この場にだけ吹雪が吹いたのかと疑うくらい、震えるほどの寒気に襲われている。

 疲れと苛立ちからくる不機嫌さが隠しきれていないグレイが、2人に向かって近づいてきていた。


「マリア」

「……お兄様!」


 グレイの声を聞いて振り返ったマリアは、王宮(ここ)に来て1番の笑顔を見せた。

 エドワード王子はマリアの笑顔にドキッと胸を高鳴らせたが、その笑顔を向けられているのが自分ではないことにムッとした。
 複雑そうな表情をグレイに向けている。

 マリアの元にやって来たグレイは、これみよがしにマリアを抱き上げてから王子に向き直った。


「エドワード殿下。マリアがご迷惑をおかけしませんでしたか?」

「……別に」

「そうですか。ではこちらの用も済みましたので、これで失礼したいと思います」

< 307 / 765 >

この作品をシェア

pagetop