心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
氷のように冷めきった碧い瞳に見つめられて、エドワード王子は背筋がゾッとした。
突然この場にだけ吹雪が吹いたのかと疑うくらい、震えるほどの寒気に襲われている。
疲れと苛立ちからくる不機嫌さが隠しきれていないグレイが、2人に向かって近づいてきていた。
「マリア」
「……お兄様!」
グレイの声を聞いて振り返ったマリアは、王宮に来て1番の笑顔を見せた。
エドワード王子はマリアの笑顔にドキッと胸を高鳴らせたが、その笑顔を向けられているのが自分ではないことにムッとした。
複雑そうな表情をグレイに向けている。
マリアの元にやって来たグレイは、これみよがしにマリアを抱き上げてから王子に向き直った。
「エドワード殿下。マリアがご迷惑をおかけしませんでしたか?」
「……別に」
「そうですか。ではこちらの用も済みましたので、これで失礼したいと思います」