心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「なぜ敬語を使う? さっきまでは普通に話していただろ?」

「だって……お兄様が……」


 先ほどエドワード王子に敬語を使っていたグレイを見て、マリアは内心焦っていた。
 国王に対しては敬語で話せていたが、王子には敬語を使っていなかったことに気づいたからである。

 きちんと敬語に直したというのに、エドワード王子は納得がいかないような不満顔をしている。


「マリアは俺に敬語を使わなくていい! 将来、け……結婚するかもしれないんだからな!」


 自分で言いながら顔を赤くする王子の様子を見て、執事や騎士たちがほんわかとした顔になった。
 周りから愛されている王子だというのがよくわかる。

 きっと、この可愛らしい空気の中しらけた顔をしているのはグレイくらいだろう。
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