心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
空気の読めていないマリアも純情な王子の気持ちには気づいていなかったため、その想いをキッパリと否定した。
「マリア、結婚しませんよ」
プフッと吹き出した声がかすかに聞こえてきた。
騎士数人の身体が震えている。どうやら笑いを堪えているようだ。
エドワード王子はイライラした口調で話を続けた。
「もしかしたらの話だ! とにかく敬語は使うな、わかったな!?」
「わかっ……」
「いや。しっかりと敬語を使え。距離感は大事だからな」
わかったと返事をしようとしていたマリアの言葉を、グレイが遮った。
バチバチ! という音が聞こえてきそうなくらい、再度睨み合うグレイとエドワード王子。
少し離れた場所から様子を見ていたガイルが、小さな声で「大人げないですな……」と目を細めて呆れていた。