心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 挨拶って言ってたよね? あのお辞儀でいいのかな?
 


 地面に足がつくなり、マリアはトコトコとエドワード王子の前に歩いていった。
 そしてスカートの裾を持ち「エドワード殿下、本日は……」と貴族のお辞儀をしようと頭を少し下げる。

 しかし最後まで言い終わらないうちに王子にガシッと左手を掴まれてしまった。
 

「?」


 マリアが不思議に思い顔を上げると、王子はつかんだマリアの左手をゆっくりと自分の顔に近づける。
 そして少し戸惑いながらも、目をぎゅっとつぶってマリアの手にキスをした。


「!!」


 何をされたのか、これがどのような意味なのかをマリアはわかっていなかったが、騎士達のほうから「おおっ」という小さい歓声が聞こえてきたので、何か特別なことなのだろうということだけは伝わってくる。

 マリアのうしろに立っているグレイは、王子に聞こえないくらいの小さな声で「このガキッ……」と呟いてはガイルに「グレイ様!」とたしなめられていた。
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