心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 書類といっても、まだグレイは帳簿の計算や使用人の給金の計算など細かいことはできない。
 ガイルが算出してくれたものを確認してサインをするだけだ。

 それでも少しでも内容を把握できるよう、グレイは自分自身でも計算してみたりして日々伯爵家当主としての勉強をしているのである。


「家の勉強も大事かもしれないけど、あんまり休んでると卒業できないぞ!」


 構ってもらえなくてつまらなそうなレオが、口を尖らせながら話しかけてくる。
 そのセリフを聞いて、グレイは「あっ」と言うなり突然顔を上げた。

 そして顎に手を当てて、何かを考えた様子でチラリとレオに視線を向ける。
 レオは「ん?」と不思議そうな顔でグレイを見ていた。



 ……そういえば、コイツに言ってなかったな。


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