心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 それから何か呪文のようなものを唱えることもなく、子どもはジッと自分の手を見つめた。

 すると、元々輝いていた黄金の瞳が、さらにキラキラと輝き出す。同時に両手からも眩しい光が漏れ出した。
 今日の昼間、窓から見た光と同じである。

 黄金の光は、怪我している部分に覆い被さるように包み込んできた。
 
 暖かい木漏れ日の中にいるような、心地よい感覚がする。
 ジンジンと感じていた痛みが、スーッとなくなっていくのがわかる。
 
 怪我を覆っていた黄金の光は、段々と輝きが薄くなっていき、フッと突然消えた。


 グレイは左腕を自分の顔に近づけ、光が覆われていた部分を凝視してみる。
 先ほどざっくりと切れていた深い傷痕は、跡形もなく消えていた。痛みもない。


「……これが癒しの力……!」
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