心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
グレイは時間を無駄にしたとばかりにペンを手に持ち、また視線をレオから手元の書類へと移した。
あっさりと興味をなくされたレオは、ペラペラと書類をめくっているグレイをキッと睨みつける。
そして捨て台詞を吐きながら扉に向かって走りだした。
「もういいよ! 俺、マリアのとこ行ってくるからね!」
「勉強中だから邪魔するなよ」
ふんっ! とグレイの言葉を無視したレオは、バタンと大きな音をたてて執務室から出ていった。
7歳のマリアよりも子どものようなレオに、呆れてものも言えない。
そんなレオを追いかけることも気にすることもなくグレイが仕事を続けていると、今度は静かにカチャ……と扉が開く音が聞こえた。
少しだけ開かれた扉の隙間から覗いているのは、先ほど怒りながら出て行ったはずのレオである。
「…………」