心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「陛下からそんな話は出たが、キッパリと断った。マリアもエドワード殿下本人に向かってハッキリと『結婚しません』と言っている。ふざけたことを言う奴がいたら、きちんと訂正しておけ。いいな?」
「わわわわわかったよ……!!」
魔王モードから抜けないグレイは、その迫力のまま書類の確認を始めた。
ペラペラと丁寧に紙をめくっていた手は、バリッ! グシャ! と乱暴になっている。
ボロボロになった書類の紙を見て、レオは心の中で『ガイル、ごめんね……』と謝っていた。
鬼気迫る勢いで仕事をしているグレイに気づかれないように、そっと執務室から抜け出したレオはふぅーと安堵の息をもらす。
念の為近くを通ったメイドに「しばらくグレイに近づいちゃいけないよ」とだけ伝えておくことにした。
「あーー怖かった! ……さて。せっかく来たんだし、マリアに会ってから帰ろっと」
そう独り言を呟くと、レオはマリアの部屋を目指して歩き出した。