心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 聖女の力を目の当たりにしたグレイは、自分の腕を見つめてニヤリと笑った。
 子どもを見ると、格子の外に出していた手をすでに檻の中に戻し、グレイの顔をじーっと見上げている。

 汚れのない純真無垢なその瞳。
 
 聖女の力に感心していた姿を見られていたのかと、グレイは少し恥ずかしい気持ちになった。

 そんな感情を持つのも久しぶりである。
 今までは誰にどう見られていようが、グレイが気にしたことはなかった。

 よく見ると、床に垂れていたはずの血も無くなっている。


「床の血を消したのもお前か?」


 子どもはコクリと頷いた。
 そういえば、聖女の力には浄めの力もあったはずだ、とグレイは思い出した。
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