心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 涙目のマリアに見つめられて、レオは本当のことを答えていいのか迷った。
 ガイルやエミリーが教えてくれないということは、グレイが口止めしているということになる。それを自分が教えてしまっていいのかと、レオは悩んだ。



 ううーーーーん。
 どうしよう。マリアに教えたら、グレイ怒るよなぁ?
 でも、マリアがこんなに不安になってるなら教えてあげないと可哀想だし……。どうしよう。



 ずっと難しい顔をして悩んでいるレオを見て、マリアはうつむきながら小さな声で言った。


「レオも言えないよね。ごめんね」

「……っ!!」


 健気なマリアの様子に、レオの罪悪感が爆発した。
 覚悟を決めたレオは、先ほどのマリアのように扉を確認してから小さな声で話しはじめる。


「ミアのキスっていうのはね、婚約者……恋人や大事な人にしかやらないことなんだ」

「恋人か大事な人……」

「男は相手の左手に、女は相手の左頬にキスすることをミアのキスって言って、その意味は……その……『あなたは私のもの』っていう意味なんだ」

「あなたは私のもの?」

「そう」

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