心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 国中にマリアをお披露目するセレモニードレスということもあり、グレイの意見も取り入れたいと半ば無理矢理この場に参加させられているのである。

 グレイは盛り上がりすぎているエミリーとルシアンに冷めた視線を向けながらも、黙ってマリアの部屋のソファに座って紅茶を飲んでいた。

 ここに自分がいる意味があるのか? という疑問は考えないようにしている。

 流れに任せようと思っていたグレイに向かって、少し興奮気味のルシアンが小走りで近寄ってきた。
 手には分厚いカタログを持っている。


「グレイ様!! グレイ様はどちらがよろしいと思いますか? 華やかなドレスとシンプルで品のあるドレスと……」



 華やかなドレスと品のあるドレスとは一体何がどう違うのだ?



 そんなことを考えながら、ルシアンが差し出してきたカタログに目を通す。
 そこにはリボンなどの飾りがたくさんついたヒラヒラふわふわのドレスと、飾りはほとんどついてないが形だけは少し凝ったようなデザインのドレスが載っていた。



 ……これはあまりにも極端じゃないか?


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