心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 グレイは眉間に皺を寄せた。
 幼いマリアにはふわふわのドレスのほうが似合うと思うが、飾りがたくさんついて鬱陶しいとも思ってしまう。

 グレイは飾りが多すぎるドレスはあまり好きではなかった。

 かと言って、もう一つのドレスはシンプルすぎる。
 これではマリアの可愛さがあまり出せないのではないか。
 グレイは睨みつけるようにカタログを見ている。


「……お気に召しませんか?」


 ルシアンがソワソワしながらそう尋ねると、グレイは険しい顔をしたまま答えた。


「なぜこの二択なのだ? この間ではダメなのか?」

「この間になってしまうと、おそらく他のご令嬢達と似たようなデザインになってしまいます。聖女様として皆様の前にお顔を出すのであれば、やはり周りとは違ったドレスを着るべきだと思うんです」

「……それでこの極端な二択というわけか」


 ルシアンの言うことには納得できる。
 確かに飾りの量を抑えたら、それは一般的なドレスと変わりない。


「たくさん飾りをつけるといっても、全て純白で揃えますのでそこまで派手にはならないと思いますよ。可愛らしさを優先させるか、あえて飾りなしのデザインで勝負するか……ですわね!」

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