心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
46 突然の訪問者
マリアの聖女セレモニーで着るドレスを決めてから数日後。
グレイがいつものように伯爵家当主としての勉強をしていると、ガイルが執務室にやってきた。
「グレイ様。エドワード殿下が……」
「なんだ。また手紙を送ってきたのか? マリアは今セレモニーの準備で忙しいから王宮には行けないと断れ」
『エドワード殿下』という名前を聞いて、グレイはガイルの話を途中で遮った。
前にも一度エドワード王子から王宮に来るようにとの手紙が届いたが、同じ理由で断っている。
今回もまた同じ内容の手紙であろうと予想したため、手紙に目を通すこともしない。
王子本人が書いた手紙ではなく、執事が書いた形式的な手紙だ。
ガイルが読めばそれで十分である。
普通ならば王子からの誘いを断りはしないのだが、セレモニーの準備で忙しいというのはウソではない。
聖女としての正しい振る舞い方など、マリアは日々レッスンに励んでいるのだ。
聖女セレモニーまで日がない分、ここは断りをいれても問題はない。
グレイに話を遮られたガイルは、表情を一切変えないまま話を続けた。