心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「いえ。お手紙ではなく、ご本人がお見えになりました」
「そうか。それなら…………って、何!?」
グレイは勉強中の手を止めて、目の前に立つガイルを見上げた。
焦った様子も困った様子も見せずに冷静に立っているガイルをジロッと睨みつけるなり、グレイはガタッと勢いよく椅子から立ち上がる。
「だったら早くそう言え!! で、王子は今どこに!?」
「来て早々にマリア様のお部屋に向かいました」
「マリアの部屋に入れたのか!?」
「いえ。マリア様はダンスのレッスンでお部屋にいらっしゃいませんでしたので、今は客間でお待ちいただいております」
「なら最初からそう言え!」
ガイルは基本的には無表情なのでわかりにくいが、慌てているグレイを見て楽しんでいるようにグレイは感じていた。
悔しいが今は王子のところへ行くのが先だと考え、ガイルのことはひと睨みするだけに留めておく。