心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「エドワード殿下。マリアにはまだ婚約者は作らないと、陛下の前でもハッキリとお答えしたはずですが?」
「でもいつか作るとしたら、相手は俺になるんだから同じことだろ!」
堂々と言い放つ王子を、グレイは冷めた目つきで見つめた。
そういう発想になるのか。
いつか俺が婚約者になるのだから、今も婚約者だと考えても同じ……ってことか?
どうやらこの王子は年齢よりも随分幼い思考をもっているらしい。
王宮の執事は目を瞑ったまま我関せずな態度でいるし、話の内容を理解しているメイド達はハラハラしながらグレイとエドワード王子を交互に見ている。
さて。このアホ王子にどう言ってわからせるか……グレイがそんなことを考えていると、部屋の入口から小さな声がした。
「……お兄様?」
その愛らしい声に、全員が振り向く。
ピンク色の小花柄ワンピースを着たマリアが、扉のところに立っている。
髪を高い位置で2つに縛っていて、服と同じ柄のリボンが付いていてとても可愛らしい。
そんなマリアを見たエドワード王子の顔が一気に赤くなったのを、グレイは見逃さなかった。