心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
47 かわいそうな王子に同情する
「……マリア。エドワード殿下がお前に会いに来てくださったぞ」
「え? ……あっ。エドワード殿下……」
入口に立ったままでいるマリアにそう声をかけると、マリアは慌ててスカートの裾を持ち、膝を軽く曲げてペコッと小さくお辞儀をした。
随分とスムーズに美しいお辞儀ができるようになったな、とグレイは感心した。
日々のレッスンがしっかりと身についている証拠である。
対するエドワード王子は、マリアに対して何も返事をしていない。
しかし、それは王子が不躾な態度をとっているからではなく、緊張して何も言えなくなっているだけだと全員わかっていた。
「マリア、ここに座れ」
「はい」
グレイが自分の隣をポンポンと軽く叩くと、マリアは小走りにやってきてその場所にちょこんと座った。
マリアが来たことで、ピリピリしていた空気が穏やかなものに変わる。
グレイからは刺々しいオーラが消えて、エドワード王子からはなにやらほんわかとしたオーラが溢れてきている。
見守っているメイド達の表情からも不安の色は消えていた。
ただ1人この部屋の不思議な空気に戸惑っているマリアに対して、グレイは優しく質問をした。