心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「マリアは、お……お兄様と踊りたいけど、お兄様は……踊るのイヤですか?」
上目遣いにグレイを見つめるマリアの愛らしさに、メイド達はキュンと胸をときめかせる。
あんな顔で見つめられているというのに、なぜデレた顔にならず平常心でいられるのかとメイド達はグレイに尊敬の念を抱いた。
グレイは少しだけ口角を緩ませて笑うと、優しい声で答えた。
「嫌じゃない」
「……! よかった……!」
マリアがパァッと笑顔になる。
その可愛らしさに、またメイド達がメロメロになっている。
そしてすぐにハッとして、全員の視線がマリアからエドワード王子に移った。
エドワード王子はショックを受けた顔で呆然としている。
(エドワード王子……かわいそう!!)
そんな使用人達からの同情に、王子は気づいていない。
自分が選ばれて安心したものの、さすがにグレイも悲しそうな顔の王子には同情してしまった。
勝手に勘違いをしていたとはいえ、まだ7歳の少年には厳しい現実である。
まだまだ幼いエドワード王子の様子を見て、グレイは仕方ないかというような顔つきでマリアに付き添っていたエミリーに声をかけた。