心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
先ほどまでのグレイに対する偉そうな態度はどこへやら。
今は、ショックでもあり……でもマリアとの時間を用意してもらったことへの嬉しさもありという、複雑そうな顔をしている。
エドワード殿下もレオと同じくらいわかりやすいな。
グレイはそう思わずにはいられなかった。
そして、そんな王子を不思議そうに見ているマリア。
まだこの部屋に来てから一度も王子と会話をしていない。
今までのやり取りも知らないマリアは、王子がなぜ少し不機嫌そうになっていたのかがわからなかった。
「では、俺は失礼させていただく」
そう言ってマリアの頭をポンと軽く撫でると、グレイは2人を振り返ることなく部屋から出て行った。
ガイルがあとをついて部屋を出てきたが、グレイは部屋に戻るようコソコソと指示を出す。
「あの2人の様子を見ていてくれ。……また王子がミアのキスでもしようとしたら、すぐに止めろよ」
そう命令すると、グレイはガイルに背を向け執務室に向かって歩き出す。
どこか寂しそうなグレイの背中を見送ったガイルは、マリアとエドワード王子のいる部屋へと戻っていった。