心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 エドワード様はこんなにつまらなそうだし私に怒ってるみたいなのに、なんで来たんだろう?
 どこか怪我してるから、マリアに治してほしいのかな?



 今までマリアに会いに来た人といえば、治癒目的の人ばかりであった。
 グレイやレオを除いて、治癒目的以外でマリアを訪ねて来る人などいなかった。
 そのためマリアは王子の目的がわからない。

 しーーん……と静まり返った頃、エミリーが数人のメイドと共に戻ってきた。
 ワゴンにはティーセットやたくさんのケーキやフルーツなどがのっている。

 ダンスレッスンで疲れていたマリアが、美味しそうな物を見て瞳を輝かせる。

 そんなマリアの嬉しそうな顔を見たエドワード王子は、つい思ったことをそのままポロッと言ってしまった。


「……お前、食いしん坊だよな」

「え?」


 マリアは『食いしん坊』という意味がわからなかったため、目を丸くして王子を見た。
 しかしエミリーや他のメイド達、さらには王子の後ろに立っていた王宮の執事は、ギョッとしたように驚いた様子で王子を見つめている。


(まだ幼いとはいえ、女性になんてことを……!)

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