心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 執事がエドワード王子の耳元でコソコソと「殿下! 女性にそんなこと言ってはいけません」と言っているのが聞こえてきて、マリアはエミリーを振り返った。


「エミリー。食いしん坊ってなあに? ダメなこと?」

「えっ!? 食いしん坊とは……その、お食事をたくさん召し上がる方のことです。ダメなことではありませんよ」

「ならどうして女性には言ってはいけないの?」

「それは……その……」


 エミリーはチラッとエドワード王子を見た。
 王子は執事からの言葉を聞いて、真っ青な顔で視線を泳がせている。

 エミリーは自分の返答がさらに王子を追い詰めてしまうのではと、言葉を詰まらせた。
 メイド達もみんなこの凍りついた空気に怯えて動きを止めている。

 執事が王子の耳元で「殿下! 何か違う話題を!」とコソコソ言っているのが、またマリアの耳に届いた。



 なんだろう? そんなに悪いお話なのかな?
『なんで女性に食いしん坊って言ってはいけないのか』またあとでレオに聞いてみよう。


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