心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
マリアがその場で答えを聞くのを諦めた時、執事に違う話題をと言われた王子が焦り気味に声を発した。
「え……っと、な、なんで初めてのダンスを兄と踊るんだ!?」
「え?」
王子がなんとか話題を変えようとして出た新たな火種話題に、その場の使用人達が再度凍りつく。執事も手で顔を覆ってしまっている。
(なんでまたその話題を出しちゃうの王子!! そんな自分の首を絞めるような話題を!!)
使用人達からの同情のような心配は、残念ながらエドワード王子には伝わっていない。
意図のわからない質問に頭の中が ?? 状態になっていたマリアも、周りの不穏な空気に気づいていなかった。
「お兄様と踊るのは……おかしいの?」
「初めてのダンスは婚約者と踊る者が多いんだぞ!」
「マリア、婚約者いないよ?」
「…………!!」
マリアのズバッと言い切った言葉に、エドワード王子が顔面真っ青で大ショックといった顔をした。
執事が即フォローするように「まだ正式には婚約者ではないので、間違ってはいません!」とコソコソ言っている。
メイド達は話を聞いてないフリを徹底しながら、テーブルにケーキを並べたり紅茶を淹れたりしている。
(マリア様! そこまでキッパリと……! ああ、かわいそうな王子! がんばって!!)