心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
無表情を貫いているメイド達からそんな応援をされてるとは知らない王子は、諦めずに話を続ける。
「だ、だが、数年後には俺とマリアは婚約者になるはずだぞ」
「なんで? マリアはずっとお兄様と一緒にいたいから、結婚しないよ」
「お前がそんなこと言ってても、そのお兄様とやらが結婚したらお前は邪魔になるだろ?」
「お兄様が……結婚?」
マリアは黄金色の瞳をパチパチッとさせた。
そんな呆気に取られた顔のマリアを見て、エドワード王子がまさか……といった感じで問いかけてくる。
「お前、それ考えたことなかったのか?」
「……うん」
お兄様が、結婚?
結婚って、ずっと一緒に暮らしていくものだって言ってた。
お兄様が誰かとずっと一緒に暮らしていく?
マリアは胸にチクッとした痛みを感じた。
いつもなら傷は治癒の力が勝手にすぐ治してくれるのに、この痛みは消えてくれない。
「じゃあ、マリアがお兄様と結婚したら……」
「お前アホか! 兄妹は結婚できないんだぞ!?」
エドワード王子の言葉でさらに胸の痛みが増した。
ズキズキズキ……
どうして治癒の力が効いてくれないのか、マリアはなぜ自分が泣きそうな気持ちになっているのか、考えてもわからなかった。