心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 結局新たな『レオ』という男の名前にショックを受けたエドワード王子は、ダンスの話も忘れて「今日は帰る……」とフラフラしながら部屋を出て行ってしまった。

 執事が「突然の訪問、失礼しました」と言ってマリアにお辞儀をしてから、すぐに王子のあとを追いかけていく。

 何が何やらわからないままのマリアは、またポツンと部屋に取り残されてしまった。
 呆然としているマリアに気遣い、エミリーが優しく声をかける。


「マリア様。ダンスレッスンでお疲れなのですから、美味しいフルーツでも召し上がってゆっくり休みましょう」

「……うん!」


 マリアの笑顔を見て、エミリーは安心した。
 グレイとの結婚の話を聞かれたらどうしようかと不安に思っていたが、マリアは美味しそうにイチゴを口に運んでいる。
 その様子を微笑ましい気持ちで見ていたエミリーは、いきなりのマリアからの質問に顔が固まった。

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