心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
50 恋心がわからない13歳のグレイ
「マリアが、俺と自分は結婚できないのかと聞いてきた?」
執務室の机に伏していた顔を上げて、グレイは眉をひそめながらガイルに聞き返した。
ガイルはいつものように腕を背中に回し、机の前で姿勢良く立っている。
ニコニコしているでもなく、いたって真剣な顔をしているが目がキラリと怪しく光っている。
俺がどんな回答をするのかおもしろがっているな……とグレイは察したが、そこは追及しないことにした。
「……なんでそんな話になったんだ?」
「エドワード殿下がまた『婚約』の話を持ち出したのです。マリア様は再度お断りされたのですが、エドワード殿下に『グレイ様が婚約者と結婚をしたらマリア様は邪魔になる。だからマリア様も誰かと婚約を』と言われ……」
「待て! 俺に婚約者はいないぞ」
「はい。そちらは私がお伝えしておきました」
グレイはホッと一安心した。
存在しない婚約者のせいでマリアが邪魔者扱いされるなんて、気分が悪かった。