心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「それで?」
「グレイ様が誰かと結婚をするというのなら、ご自分が結婚したいとマリア様はおっしゃいました。しかし兄妹は結婚できないとエドワード殿下に言われ、マリア様は大変傷ついて……」
「待て! 俺とマリアは血が繋がっていない兄妹だぞ?」
グレイはまたしてもガイルの話を途中で止めた。
ガイルは気分を害した様子もなく、つぶらな瞳で真っ直ぐにグレイを見つめる。
「はい。ですが、マリア様は血の繋がりがなければ結婚できるということをご存知ないですし、エドワード殿下もお2人は本当の兄妹だと思っております」
「なんでその場で訂正しなかったんだ?」
深くは考えていないであろうグレイのその質問に、ガイルはふぅ、と目を瞑り小さく息を吐いた。
大人っぽくしっかりしているとはいえ、人とあまり関わってこなかった13歳のグレイ。
家庭崩壊してからは、心を持っていない人形のようだったグレイ。
そのグレイに、人の心の深い部分まで見るように……というのは難しいことなのかもしれない。
ガイルは優しく丁寧に説明を始めた。