心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「マリア様にそれをお伝えになれば、きっと安心して喜ばれることでしょう」

「なら早く伝えてこい」

「では、グレイ様は本当にマリア様と結婚をする気持ちがありますか?」

「は?」


 ガイルの顔は無表情のままで何も変わっていない。
 でもどこかギラリとした威圧感を感じて、グレイは内心少したじろいだ。



 なんだ? 結婚? 俺とマリアが?



 グレイは訳のわからないことを言われて怒っているような、戸惑っているような、変な顔になっている。
 何を言っているんだとガイルに言い返したいところだが、真剣な表情を見る限り冗談ではないらしい。


「……なんで俺とマリアが結婚するんだ。本当の兄妹ではないが、俺はマリアを妹として見ているんだぞ」

「でしたら、結婚できると伝えるべきではないかと」

「なぜだ?」

「グレイ様に結婚するお気持ちがないのであれば、結局は結婚できないのですから」


 グレイは一瞬意味がわからなかった。
 授業中でさえしたことのないような理解できない顔でガイルを見るが、詳しく教えてくれる気配はない。



 本当の兄妹ではないから結婚はできるが、俺に結婚する意思がなければ結婚はできない……?


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