心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 ガイルの言っていたことを頭の中で考えてみる。

 グレイと結婚ができないと思って傷ついているマリアに、本当は結婚できると伝えれば喜ばせることができる。
 しかし、グレイに結婚するつもりがないのであれば結局結婚はしないのだから、伝えても意味がない。



 ……そういうことか?



 アゴに手を当てて考え込んでいたグレイは、チラリとガイルに視線を戻す。
 ガイルは無表情のまま静かにグレイの様子をうかがっていた。


「血が繋がっていようがいまいが、どちらにしろ結婚はしないのだから『結婚できる』と伝える必要はない……ということか?」

「左様でございます」

「だが今マリアが傷ついているなら……」

「今のマリア様のことだけを考えるのであれば、お伝えしたほうが良いでしょう。小さな傷はすぐに消えます。ですが、その希望を与えてしまったことで、将来もっと大きな傷になってしまうかもしれませんよ」

「もっと大きな傷?」


 グレイにとって、ガイルの言っていることがこんなにも理解できなかったのはこの日が初めてであった。
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