心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 なぜ自分と結婚できることがマリアの希望になるのか。
 なぜその希望のせいで未来のマリアが傷つくことになるのか。
 なぜそれが今よりも大きな傷となるのか。

 グレイにとってはわからないことだらけである。

 そして、グレイが全く理解していないことをわかっていながら、なぜか教えようとしないガイル。
 一体何を考えているのか、何が言いたいのか、その無表情からは読み取ることができない。


「ガイル。言いたいことがあるならハッキリ言え」

「いいえ、私の口からは申し上げられません」

「は? ……どういうことだ?」


 頭に ??? マークが浮かんでいるグレイの顔を見て、ガイルが初めて無表情を崩した。
 とても残念なものを見るかのような憐れみの目でグレイを見つめてくる。
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