心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「またか? それならもっと早く言え。俺が時間を合わせることもできる」

「報告が遅れまして申し訳ございません」


 ガイルがペコリと頭を下げて謝るが、本気で反省していないことはわかる。
 むしろこの事後報告がわざとだということにもグレイは気づいていた。

 このやりとりはこれが初めてではない。
 そしてガイルは同じミスはしない。ガイルが何度も同じことを注意されるなどあり得ないのだ。

 つまりこれは計画的にグレイとマリアの食事の時間をズラしているということになる。


「最近マリアに会っていないな」

「何をおっしゃっているのですか。日に2回はマリア様のレッスンに顔を出されてるではないですか」

「……なんで知ってるんだ」


 自身の休憩中にほんの数分だけマリアの様子を見に行くことがあるが、それをガイルに伝えたことはない。
 なぜ知っているんだと驚愕する気持ちもあるが、それ以上にグレイは気恥ずかしさで飲みかけのスープを噴き出しそうになった。

 そしてその顔出しこそが、グレイがマリアに避けられていると感じる理由の2つ目である。
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