心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
今までのマリアは、グレイが顔を出すと嬉しそうに笑顔になった。
グレイはそのマリアの笑顔を見るのが好きだったのだが、ここ最近はその笑顔を見ていない。
マリアはグレイが来たことに気づくと、焦ったような困ったような顔になる。
決して嫌そうな顔ではないのだが、どこか気まずそうなその雰囲気にグレイは疑問を感じていた。
「夕食後にすぐ勉強か……。ちょっとやりすぎじゃないか?」
「聖女のセレモニーでは他国の方々もいらっしゃいますので、学ぶべきことがたくさんあるのでございます。あと半月の辛抱ですね」
「はぁ……。昔からしっかりと学ばせていれば、今こんなに苦労することもなかったのにな」
グレイの中から消え去っていた両親の姿が、久々に頭に浮かぶ。
監禁したりせず、普通に育てることがなぜできなかったのか。
自分の親ながらどうかしている……とグレイは呆れ果てた。