心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「そうか? 最近のマリアは俺といると作ったような笑顔になったり落ち込んだ顔をしていたり、よくわからない。レッスンを入れ過ぎて疲れているんじゃないのか?」
「…………」
グレイが少し険しい顔で真面目にそう話すと、ガイルの顔から優しい表情が消えて冷めた目つきになった。
突然向けられた軽蔑しているような視線に、グレイはムッと不機嫌になる。
「……なんだよ」
「グレイ様、先日私が言った女心について……まだお勉強されていませんね? その件についてマリア様が今でも不安に思っていること、ご存知ないのですか?」
「あいつ、まだあのことを気にしているのか?」
目をパチッと開いて驚いているグレイに、ガイルからの冷たい視線がさらに強くなる。
兄妹は結婚できないという話については、あの日以来1度もされていない。
そのため、その件はもう落ち着いたのだろうとグレイは思っていた。
でもそれを聞いて、最近マリアに避けられていると感じたのは間違っていなかったと確信した。
食事の時間をズラされているのも、ガイルが協力しているからだろう。