心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
なんでお兄様を見ると悲しくなるんだろう……。
前は顔を少し見れるだけでも嬉しかったのに。
自分の感情がよくわからないマリアだったが、なんとなくその理由が何についてかは気づいている。
ずっと頭から離れない、あの言葉。
『お前の兄が結婚したらーー』
エドワード王子が言った言葉が頭の中に浮かんできては、マリアの胸をチクチクと刺していく。
この痛みだけは、治癒の力が使える日にも治ってくれない。
なんでこんなにイヤな気持ちになるのかな?
お兄様が誰かと……女の人と一緒にいるところを考えるだけで、泣きそうになる……。
エドワード王子に言われたように、邪魔者になるのが怖いのか。
グレイと一緒に暮らせなくなるかもしれないのが怖いのか。
なぜ自分がこんなにも不安になるのか、マリアにはわからなかった。
ガイルやエミリーに聞いても教えてくれない。
2人に相談してからは、なぜかグレイとの食事の時間がバラバラになってしまった。
しかし、顔を合わせなくていいことにマリアは少し安心していた。