心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「ずっと忙しかったから、ちゃんと話すのは久しぶりだな。レッスンは大変ではないか?」
「うん。みんな優しいし、楽しいよ」
「そうか……」
気まずい気持ちをなんとか抑えて、マリアはがんばって笑顔を作る。
しかし、その笑顔が不自然であることにグレイは気づいていた。
「マリア。その……兄と結婚できないという話を、エドワード殿下にされたらしいな」
突然の話題に、ニコニコしていたマリアの表情が一気に真顔に変わる。
硬直したかのように固まっている。
「マリアは俺と結婚したいと思ってくれたのか?」
なぜグレイがこんな質問をしてくるのか、マリアにはわからなかった。
もう数日も前の話だというのに。
グレイの真意はわからないが、マリアは正直に答えることにした。