心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「んーー……まだ想像もつかないが、まぁいつかはするんじゃないか? 貴族だからな」
そう正直に言うと、マリアの眉間にシワが寄った。
無表情のマリアから出た『負』のオーラに、グレイは一瞬ビクッと驚く。
「マ、マリア?」
「そのお相手はもう決まってるの?」
自分の不満顔に気づいていないのか、マリアは質問を続けてくる。
グレイはなぜこんな質問をされるのかわからなかったが、マリアの表情を見て早めに終わらせようと次はすぐに答えた。
「いや。どうせそのうち話を持ってくるヤツがいるだろうから、その中から決めると思う」
マリアの眉間のシワがさらに深くなり、不満さが倍増したのがわかった。
口をムッと尖らせて、大きな瞳でグレイをじーーっと見つめてくる。
普段は他人の不満そうな顔を見るとイラッとするグレイだが、マリアの不満顔は不思議ととても愛らしく感じていた。
本人はそんな表情になっているとは気づいてなさそうなところが余計に可愛い。
怒っているのかと思えば、マリアは急にグレイから目をそらして元気のない小さな声でつぶやいた。
「……そっか」