心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
シワが寄っていた眉間は元に戻り、今は眉が下がっている。視線は下を向いていて、もうグレイに向けられてはいない。
出会った頃の表情のないマリアを思い出して、こんなに表情がコロコロ変わるようになったのか……とグレイは感心していた。
そしてすぐにマリアが落ち込んでいることに気づいて、ハッとある言葉を思い出す。
『どうかマリア様を傷つけないようにお願いしますね』
突然ガイルが頭の中に現れて、「だから言ったのに」とグレイを責めてきた。
その手には例の恋愛小説がしっかりと握られている。
ちょっと待て!!
これは俺がマリアを傷つけたことになるのか!?
そもそも、なぜマリアはこんなに落ち込んでいるんだ?
今の会話に何か傷つけるようなことがあったか?
焦ったグレイは先ほどの会話を思い返してみる。
いつかは結婚をする、そんな話しかしていないはずなのに、なぜマリアは落ち込むのか。
……あっ!
もしかして、エドワード王子が言った『俺が結婚したらマリアは邪魔になる』という言葉を気にしているのか!?