心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 シワが寄っていた眉間は元に戻り、今は眉が下がっている。視線は下を向いていて、もうグレイに向けられてはいない。

 出会った頃の表情のないマリアを思い出して、こんなに表情がコロコロ変わるようになったのか……とグレイは感心していた。
 そしてすぐにマリアが落ち込んでいることに気づいて、ハッとある言葉を思い出す。


『どうかマリア様を傷つけないようにお願いしますね』


 突然ガイルが頭の中に現れて、「だから言ったのに」とグレイを責めてきた。
 その手には例の恋愛小説がしっかりと握られている。

 

 ちょっと待て!!
 これは俺がマリアを傷つけたことになるのか!?
 そもそも、なぜマリアはこんなに落ち込んでいるんだ? 
 今の会話に何か傷つけるようなことがあったか?



 焦ったグレイは先ほどの会話を思い返してみる。
 いつかは結婚をする、そんな話しかしていないはずなのに、なぜマリアは落ち込むのか。



 ……あっ!
 もしかして、エドワード王子が言った『俺が結婚したらマリアは邪魔になる』という言葉を気にしているのか!?


< 383 / 765 >

この作品をシェア

pagetop