心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
よく考えてみれば、『女性の気持ち』はともかくなんでここで『恋心』の話になるんだ?
マリアと俺は兄妹なんだから恋心は関係ないだろ!!
初恋すらまだのグレイには、女性の気持ち以上に恋心が理解できない。
理解したいとも思ったことがない。
だが今はとにかくマリアを元気にさせなくては……そうグレイが思考をめぐらせた時、部屋の扉をノックされた。
コンコンコン
「グレイ様。マリア様。ガイルでございます」
「……入れ」
マリアの部屋だったが、当然のようにグレイが返事をした。
助かった、と思わずホッとしてしまったことが少し悔しい。
「失礼いたします。グレイ様、マリア様は明日も朝早くからレッスンがありますので、そろそろ……」
「そうか、わかった」
ガイルは部屋には入らず、入口に立ったまま退室を促してきた。
チラリとマリアの様子を確認したのがわかったが、特に何か声をかけることはしない。
今の理解不能な状況から解放されて安心はしたが、この落ち込んだマリアをそのままにしていいのかという疑問も残る。