心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「……いや、なんでもない。また明日」
「……うん。おやすみなさい、お兄様」
「おやすみ」
グレイはマリアの頭を軽く撫でたあと、振り返ることなく部屋から出ていった。
バタンと静かに扉を閉めると、すでに廊下に出ていたガイルと目が合う。
ガイルは呆れているような残念そうな目でグレイを見つめている。
「……なんだ?」
自室に向かって歩き出しながら、グレイは睨みつけるようにして問いかけた。
「邪魔をしてしまい、申し訳ございませんでした。あのままですとマリア様がさらに傷ついてしまうと判断し、間に入らせていただきました」
「部屋の外にいたのに、なんでマリアが傷ついたとわかったんだ?」
「聞こえておりましたから」
グレイの足がピタリと止まる。
斜め後ろからついて来ていたガイルも、同時に足を止めた。